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夢の中へ

サトシ:ハッ!!!!

シゲオ:目が覚めたようやな。

サトシ:シゲオ!

シゲオ:一体何時やおもてんねん。もう一時限目始まるで。

サトシ:よくもオレの身体を…!

シゲオ:? 何のことや?

サトシ:しらばっくれるな! キサマに改造されてオレはアポロライト無しでは生きていけなく……
元に戻っている…?

シゲオ:何のことかわからんが…察するに多分それは「夢オチ」っちゅうやつやないか?

サトシ:? なんだと?夢オチ? 何のことだ??

シゲオ:太古の昔より伝えられる伝説の奥義、「夢オチ」。
全ての伏線を無かったことにし、さらにはその一話のみで一瞬にして無理やり話を終わらせる禁断の秘術。
このご時世にお目にかかれるとはな。

サトシ:…あれが夢? そんなバカな。 あんなリアルな夢があってたまるか!

シゲオ:はい、皆さんそう言われます。

サトシ:ではオレはこれから学校に通うのか?

シゲオ:そうですね、先立つものが特になければそういうことになるかと思われます。

サトシ:…

シゲオ:…

サトシ:ところでジブン、なんでオレの部屋におるん?

シゲオ:はい、この夢オチからスムーズに次の話に移行するために用意された説明要員です。

サトシ:説明要員?

シゲオ:はい、例えばバトル漫画で新しい敵が現れた際、最初に瞬殺されて敵の強さの基準を説明したり、
ナレーションの代わりに読者にわかりやすく現状をセリフで伝えるなどの潤滑剤としての役割です。
そしてこのブログの本来の目的であるアポロライトを始めとする他商品に関する認知度向上は全く果たされておらず、このままだと消滅の危機にあります。

サトシ:なんやと? アポロライトがそんなに重要やったとは…

シゲオ:もちろんです。このブログはペンライトファームによる運営によって成り立っており、個人のしょうもない話をはきだめる場所ではありません。
ビジネスの一貫なのです。それが成されなければ存在することは叶いません。

サトシ:シビアな世界やな。

シゲオ:はい、片手間で適当に気の向いたときだけ中身のない話を更新しているブログでは存在理由を問われても無理はありません。

サトシ:え、でもそんなことオレに言われても困るやん。

シゲオ:いいえ、これはいわば自問自答。自分との対話です。

サトシ:自分て?

シゲオ:自分とはすなわちこの物語の作者です。
これは彼の迷いと苦しみを対話形式で綴った物語なのです。

サトシ:人の作る物語が全てそうであるように?

シゲオ:その通り。人の生み出す物語はその人の鏡であり内面そのものなのです。
彼はアポロライトを始めとするペンライトファームの扱う商材のPRをブログで行わなければならないとわかりながらそれに徹することが出来ませんでした。

サトシ:彼はペンライトを愛してはいなかった?

シゲオ:…ペンライトだけではありません。彼の価値観は社会性溢れる側面と、それとは全く乖離した真逆の、全てが等しく無価値であるという答えにより完全な二面性を持ってしまっていた。その狭間で苦しんだのです。

サトシ:そうか、本音を覆い隠すために…

シゲオ:そうです。素直な表現ではいつか自分の偽りが世に暴かれてしまう…それを恐れた彼は歪曲した表現で本音をカモフラージュしたのです。
しかしそれも長くは持ちませんでした。

サトシ:ならば…

シゲオ:いっそ壊してしまおうと…

サトシ:なんてことや…いつか果てると知りながら、偽り続けなければならないなんて…

シゲオ:でもそれはすべての人に当てはまること。
ときに我々は生物の目的を数を増やし繁栄することだと勘違いしてしまいます。
それは人類の行ってきたあらゆる動植物への蹂躙の、最も安易な理由になり得たからです。

サトシ:そうではないと?

シゲオ:そもそも生物というものが宇宙から見ればイレギュラーな、マイノリティな存在なのです。
想像しください。
白い砂漠の中に一粒だけ青い砂粒があるとして、それがどこにあるかもわからず、あるかどうかも不明瞭で、にもかかわらずその一粒が他の無数の白い砂に対して正であると言っているようなものです。

サトシ:それに気づいてしまった…

シゲオ:はい、彼は気づいてしまったのです。
自分が青い砂粒であることに。無に等しいと。全てが無意味で無価値なのだと。
高等生物であると思い込んでいた自分たちの行動規範が、実は最も的外れで滑稽なものなのではないかと。
高価な車や大きな家に憧れるこの価値観は一体いつ植え付けられたものなのか…
己の思想や概念は、本当に自分のものなのか…

サトシ:個ではない?

シゲオ:そうです、我々の意思は個から生まれるようでありそうではありません。他と同調しているだけで個の意思など無いに等しいのです。
我々は集合体として初めて完成するにもかかわらず、最後まで個を主張するが故に永久に答えにたどり着かないのです。

サトシ:答えとは…

シゲオ:ここが宇宙であり、我々が宇宙そのものだということです。
境界線は無く、一体だということです。
それがわかったとしても本当の意味でそうあることは至難の業です。

サトシ:宇宙は広すぎた…

シゲオ:はい、残念ながら。広大な宇宙を前に恐れ、目を背けました。
人至上主義を植え付け神を気取ることで正気を保ちました。

サトシ:先が見えないということか…

シゲオ:我々のルールや思想や概念は全て我々にしか通用しません。
我々人間が最も優れた動物であるという考えも、我々人間にしか理解できないのです。

サトシ:まるでお金みたいやな。

シゲオ:はい、人間の生み出した通貨にはじまる金融システム。
人にしか通用しないにもかかわらず、それを手にすることでまるで万物の頂点であるかのような勘違いを起こします。

サトシ:金を持ってたら偉いんかっちゅう話やな。

シゲオ:確かに偉いは偉いのです。偉大です。
ただそれが砂漠の中の青い砂粒に対してのみであり、それが限界だということです。
そして青い砂粒にとってはそれが全てだということです。

サトシ:…とりあえず今日は学校休むわ。

この記事を書いた人

koji
あまりの方向音痴で高校の帰り道にうっかり遭難し、自宅に救援を求めた過去を持つが、携帯ナビの技術的進歩により近年では道に迷うことがなくなった(グーグルありがとう)。
電車の乗り方がイマイチよくわからず、JRはJR線という電車だと思っていた為、山手線にたどり着くことが出来なかったのは遠い昔の話だ。
名古屋出身。